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ファビュラスを手にした男【前編】

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こんにちは。わくわくスイッチブログ担当者です。

毎月1回のお楽しみ、わくわく劇場ですが、2~3月は特別企画として、買い物に便利なイオンタウンを舞台にしたショートストーリーをお届けします。

 

特に何か事件が起こるわけでも、心を揺さぶるシーンがあるわけでもありませんが、良かったらどうぞ。

 

 

 

 

 

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2020年が始まるも、山城の気分は過剰に落ち込んでいた。

何が原因という訳ではない。些細な鬱憤が積もり忙殺され、立っていることも居た堪れない状況であった。

 

消えてしまいたい。

しかしそんな勇気を持ち合わせていない。

生温かい環境に置かれ、心のなかに潜む「魔」が精神を蝕む。けれども実体は、そこにない。そのことが余計に山城を苦しめる。

 

ひとつ、述べておきたいのは、山城自身が置かれている環境は、当人から見ても、まあまあ幸福な事だ。衣食住に足り、仕事もある。だが時に、決められたレールから逃げ出したくなることもあった。しかしながら、やはり悩む理由などあろうものか、、それは重重わかっていた。

 

そもそも何故気分が晴れぬのか、山城自身も判らぬ故、3時間に1度くらい「あれ?もしかして悩んでないのかも」みたいな間もあったみたいです(笑。だが、それはそれで、日常=あまりにもナルい現実と向き合うことを意味する訳で。自分自身を非日常におくことで山城は精神の安寧を測っていると云う、世に言う中二病を患っていた。さらに悪いことに、山城の齢は30をとうに過ぎていた。

 

本人をよく知る者が云うには、山城はずっと背伸びをしてきたらしいのだ。中高生のうちは無理に洋楽やインディーズバンドを聞き漁る日々だった。結局20歳でFUNKY MONKEY BABYSとGReeeeNに落ち着いたという具合だ。カラオケで歌いやすいからだろう。

 

無駄にプライドが高い山城は、自身の葛藤を誰かに相談することが出来なかった。そうして月日は流れていった。

 

 

 

 

 

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Yahoo!知恵袋の存在はとっくに知っていた。さりとて、匿名であれ、見知らぬ人に悩みを打ち明けるなど、山城にとってあり得ぬことだった。しかしこの日は違った。

 

「人生に悲観してる」

 

緊張した指でタイピングを始めた山城だが、直ぐに自分語りに酔い、つらつらと人生を書き記していた。

 

そして、報酬である知恵コインの枚数を入力する段になった。初利用なのに知恵コインは1000枚ほどあった。

 

なんでこんなに知恵コインがあるのか、と山城は疑問に思った。こんな時ですら、人間の探求心は羽を広げてしまうから厄介だ、とも、、、。知恵袋のシステムについて、検索し始めること20分。山城の人生でこれほど無駄な時間はあっただろうか。結局調べてもよくわからなかった。知恵袋にはこういった罠があるから注意されたい。

 

本題に戻るが、いや、もはや何が本題かわからぬが、知恵袋にはすぐ回答がついた。

 

「一度専門的なカウンセリングを受けてみたら」

 

"専門家以外の意見が聞きたくて知恵袋に相談している"という現実は、回答者には関係がないことだ。むしろ、回答者にすれば、ほかにアンサーがつかないだろう質問に片っ端から回答していくことで、知恵コインを荒稼ぎしているに過ぎぬ。無慈悲な顛末に山城は頭を抱えた。

 

さまざまな質問を角度を変えて投稿したが、真っ当な回答を得られなかった。質問の仕方が悪かったのか?長すぎたのか?誰も知る由はない。


一つだけ言えることは、山のように知恵コインを積んでも、真のベストアンサーがあるとは限らない。おかしいな、と更にコインを積むが、一向に回答は増えなかった。

 

気づけば、回答を得ることよりも、回答を得やすくするための質問テクニックを研究してしまう。知恵袋とはそういう闇を抱えている。

 

こうして山城はYahoo!からログアウトした。

 

 

 

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気づけばもうビジネスパーソンという役割を数年間こなしていた。仕事ファーストでいることが、結局のところ心の負担が少なく、何をするにも、無難を重視するようになった。

 

ちなみに、山城には趣味などない。週末はあてもなくイオンに行き、本屋で立ち読みをする日々だった。たまにマックに行き、期間限定のバーガーを食らい、四季を感じるような男だ。

 

しかしながら、その日は違った。山城は何か普段と違う選択をすべきだと、誰かに言われたような気がしたのだ。

 

積み重なる悩み、葛藤は灰汁のようにあぶくとなって、心のふちに潜んでいた。これを払拭するのにはもしかしたら、「インドに行く」くらいの人生観を変える行動、現状を打破するような強いインパクトが必要だったのかもしれない。

 

それで、ついぞイオンに向かったのだ。アクセルを強く踏みこみ、向かった。それも、普段いかない方のイオンへ。

 

最寄りのイオン(以下、近イオン)ではないが、まあまあの距離にある普段行かない方のイオン(以下、遠イオン)。

 

スマホの乗り換えや、知人との待ち合わせなど、特別な用事がない限り、この遠イオンに足を踏み入れることは、ない。

 

ここには、近イオンにはないテナントがある。たとえばカルディだ。

 

 

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カルディは「一瞬だけほしくなるが、結局買わない食材」を見つけるのに最適なプレイス。

 

漫画のようなチーズや、正しい発音を存ぜぬ韓国料理などを手に取っては、棚に返す。試飲のコーヒーを飲み干すまでの30秒間は飽きることなく過ごせる。買いそうな、思わせぶりな態度を見せるも、何ひとつ買わずに、試飲のカップを捨てて店を出るのだ。しかし、カルディの店員はきっと試飲目的か買い物目的か瞬時に見受けられるのだろう。ある時期からもう見透かされることを当然と考え、一切の無駄な駆け引きをしなくなった。

 

そんなことを思いながら、甘いミルクコーヒーを飲み干し、カップを捨てた。カルディの方を振り返る。

 

カルディに出会った当初は、もの珍しさに心を奪われたが、悲しいかな、今の山城にはカルディではしゃぐほどの元気は残っていなかった。もっと人生観をアップデートするほど強烈な、強く惹きつけられる運命の出会いが欲しかった。

 

鬱屈とした気持ちと同時に、はやるような気持ちが突き上げる。普段行かないというだけで、イオンはこんなにも心を揺さぶるのか。

 

気づけばエスカレーターを駆け上がっていた。

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第三章 恭子との出会い へつづく

 

ファビュラスを手にした男【後編】 - わくわくスイッチNEWS

 

今回の作者

ふぁびゅらす さん(担当者の分身)

 

 

 

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